Night of beginning 2
3月25日(木)
もう直ぐ……夜が明けるみたいだ……。
オレの身体……どうなったんだ?
早くに眠りについた俺は、寒さで目が覚めた。
そして、そのオレの目に飛び込んできたモノ……
それは高校生のようになってしまった……オレだった。
「なんで……こんな事になちゃったんだよ……。」
オレはねえちゃんの歳に近づきたいって思った……。
……思っちゃいたけど……
イキナリこんな身体になりたかったんじゃない!
イイ男になって……
オレのペースでオレの時間で!
ねえちゃんの……
ねえちゃんの側に居たくて……
「!……ねえちゃん……!」
オレはねえちゃんの部屋に向かった。
足音を忍ばせて……。
いつもノックしろって、ねえちゃんに怒られるけど……。
今は、起こすわけにいかない。
こんな姿……ねえちゃんに見せられないよ。
でもオレ!……
ねえちゃんの顔が見たい。
見たいんだ……
オレは、そっと部屋に入り、ねえちゃんの顔を覗き込んだ。
良かった……
グッスリ眠ってる。
オレは、ベットの側に座り込んで……。
……ぼうっと、ねえちゃんの顔を眺めてた。
「ねえちゃんオレ……どうしたら良いんだろ?こんなんじゃ……ねえちゃんの弟じゃないよな。」
……泣きたくなった……
最近じゃ、泣く事なんて無かったのに!
……なんでオレねえちゃんの弟なんだろって……思った事もあったけど
こんな風に弟で、いられなくなるなんて思わなかった。
ねえちゃんの側に居られなくなるなんて
考えもしなかった。
でも……。
もう側に居られないんだ。
「こんなデカイ弟……普通いないよな?」
夜が明ける前に、家を出よう。
こんな姿……父さんにも母さんにも見せられないよ。
……当然、ねえちゃんにも。
ねえちゃんに気味悪がられたりしたら……オレ!……
「ねえちゃん……さよなら……!」
オレは、ねえちゃんの頬を撫でたあと部屋を出た。
父さんの服、借りて行こう。
こんな格好じゃ、外も歩けないもんな……。
オレはそのまま父さん達の部屋に行き
クローゼットからオレが着れそうな服を探した。
父さん、気が若くて良かったよ。
この状態のオレが着ても、違和感無い服ばっかりだ。
母さんもそういう服が好きなのか
若い男が着るような服を、父さんに買ってくる。
……そのお蔭で助かった。
オレは自分の部屋に戻り
父さんの服に着替え、貯金箱を開けた。
この前、新しいゲームソフトを買ったから
あんまり、残ってないや。
でも、無いよりは良いよな?
玄関に向かいドアをそっと開け、表に出た。
「父さん……母さん……さよなら……。」
父さん達の部屋を見上げ、ポツリとオレは呟いた。
その反対側にある窓は、ねえちゃんの部屋だ。
「……さよなら!……ねえちゃん……!!」
オレは繁華街に向けて走り出した。
駅に行かなきゃ……
だって、もうココには居られないから!
このお金で、どこまで行けるか分からないけど
誰に会うか分からないし。
もし知り合いに会って、オレが○○尽だって分かったら
父さん達に、迷惑が掛かっちゃうよ。
それに……ねえちゃんにも。
オレみたいな、変な弟がいるなんて分かったら
ねえちゃんに酷い事、言う奴がいるかもしれない!
それどころか……大学にも行けなくなるかも!
一流大学に行くんだって、嬉しそうに言ってたもんな。
……だから。
だから行くしかないんだ。
オレはココにいちゃいけない人間なんだ……!
自分の思いで一杯のオレは、ただ走り続け周りを見ていなかった。
……そう。
誰かが歩いているなんて思わずに。
無我夢中で走っていたオレは、とんでもない相手と
ぶつかってしまったんだ……。
「っ……!」
「君、大丈夫か?」
「えっ?…!氷室先生っ!?」
「?……君は……?」
な……んで…ここに、氷室先生が……?
!……クソッ!!
なにやってんだよ、オレっ!
オレって、こんなに要領、悪かったかぁ〜?!
泣きたい気持ちのオレをよそに、怪訝そうな顔をした氷室先生が
ジッっとオレを見つめていた……。