Night of beginning 32

 

「……○○○。」
「!?……侭くん……。」



うちの近くの児童公園に。
ブランコに揺られながら……ねえちゃんは居た。


ねえちゃんが……葉月と雨宿りしていた公園に……。



あの雨の日。

偶然、通りかかったみたいに言ったけど……
オレ、本当は……迎えに行ったんだ。


葉月が……


いつもと違っていたから……
オレ、焦って飛び出したんだ。


多分……ねえちゃんに告白でも、するつもりだったんだろう。
無口で通ってる葉月が、あれだけ喋ってるんだからさ。



……普通、気づくよな?


でも、ねえちゃんは天然でボケたとこがあるから
気がつかなかったみたいだった。

冗談に紛らわせて言ったオレに、ねえちゃんは呆れてたけど……
本当はオレの方が呆れてたんだぜ?



『おまえがそうして、横にいてくれれば、俺は……』


あの葉月が……そこまで言ってるのにな。


あの後、凄い罪悪感がオレを襲った。


……ただそれは。


葉月に対してじゃなく、ねえちゃんに……だけどな。



『……なあ、ねえちゃん。オレ、ねえちゃんの恋路邪魔したのか……?』


ねえちゃんが葉月の事が好きなら……

……オレはイヤだけど!

でも……それは仕方が無い事だから……



だけど、そう聞いたオレに

『余計なこと言わないの!』

……で終わっちまった。



葉月の言った言葉に、ねえちゃんは首を傾げさせていた。

気にはしていたみたいだけど深読みはしなかったようだ。



オレはホッとした。

この時ばかりは、ねえちゃんが鈍くてよかったよ。



……だから。

今。

このチャンスがオレにある。

 

ねえちゃんに……オレの気持ちを話せるんだから……さ。



「○○○……好きだ。」



オレは、そっと……ねえちゃんに手を伸ばし抱きしめた……。

 

 

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