Night of beginning 1

 

 

 

 

3月24日(水)

今日は修了式だった。
明日から待ちに待った春休み!

春休みは良いよなぁ〜♪
宿題が無いからな!

でも春休みに宿題があったとしても
オレは、ちゃぁ〜んとやるけどね。
勉強が出来るのもイイ男の条件だからさ!

ねえちゃんの行ってる、はばたき学園は
とっくに春休みに入ってる。
高校って休みになるのが早いんだな。

……なんかズルくないか?

オレは7日が始業式だけど、ねえちゃんは5日だし。
休む期間も多いよな。

羨ましい……。

あ……でも
オレも春休みが終わったら、もう6年生なんだ。

小学校も、あと1年……か。
来年の春は中学生。

中学からは、はば学か〜
あそこは、結構イイ男が揃ってるからな。

ま!オレが通う頃には
レベルの高いアイツらは、皆ぃ〜んな!
卒業して、いないんだろうけど!

だけどオレ……

ねえちゃんの周りにいる奴らより
絶対!イイ男になってやる!!

「見てろよ〜ねえちゃん!!」
「尽〜…呼んだ?」
「ゲッ!?ねえちゃん!?」

オレは自分の世界に入りすぎて……
ねえちゃんがオレの部屋に入ってきたのに
気がつかなかったみたいだ。

「な、なんでもないよ!」
「そう?なら良いけど。あ!あんた、春休みになったからって夜更かししちゃダメよ!」
「……分かってるよ。もう寝ようと思ってたとこ。」
「よろしい!小学生は、もう寝る時間だものね。」
「小学生って…悪かったね!」
「拗ねない、拗ねない!じゃあ早く寝るのよ?おやすみ尽♪」
「ちぇ……おやすみ」

そういうと、ねえちゃんは笑ってオレの部屋から出て行った。

……なんだよ。
人の気も知らないで……

クソッ!
もう寝ようっ!

オレはパジャマに即行着替えるとベットに入った。

今日も一日が終わる。
そして目覚めれば、また新しい一日が始まるんだ。

そうやっていくうちに
オレはねえちゃんの歳に近づいていく。

……でも……
絶対、同じ歳にはならないんだよな……。

オレが中学生になると、ねえちゃんは大学生。
ねえちゃん、一流大学に行くんだよな。

ハァ〜……
オレ、ねえちゃんに一生、追いつけないのか。
6つの差は大きいよ……。

オレは、そんな事を考えながら、眠りに落ちていった。

「……ん……?な……んだ…ろ……?さむ……」

オレは、寒さで目が覚めた。

布団が落ちたのかな?
どこだ?布団?

手探りで探してみる。

……あれ?
オレ……ちゃんと布団、掛けてるじゃん?
じゃ、なんで寒…い……?

手探りをしていたオレは、自分の身体に布団がある事は分かった。
……分かったんだけど、なんで寒いのか分からない。

風邪でもひいたかな?
なんだ?コレ?

オレの手に、何かの布が纏わり付く。

……コレって……布切れ?

「うわぁ!」

オレは慌てて飛び起きた。

布団なんか破ってみろ!
母さんに怒られる!!

オマケにねえちゃんに、なんて言われるか!

……って……あれ?
コレって、パジャマ??
なんで、パジャマの切れ端なんかあんの?

オレはゆっくり、自分の身体を見下ろした。
パジャマを着ているはずの自分の身体を……。

「わぁーーー!!!なんだよ!コレっ!!!」

思わずオレは叫んでいた。

そりゃ、そうだろう?
着てるはずのパジャマが、ビリビリに破れているんだから!

「オレ……ここまで寝相、悪かったか?」

そんな独り言を言っているオレの目に
飛び込んできたのは机の上にある鏡だった。

イイ男を目指すオレにとっては
必需品である、その鏡。

いつもその鏡で、身嗜みをチェックしている。
そんなオレが、初めて目にした者……。

……そう……物じゃなくて……者だったんだ……。

「……誰…だ?……おま…え……?」

そいつは、ねえちゃんくらいの歳で……。
オレと同じパジャマらしき物を着ていた。

破れた布切れを手に、こっちを見ている。
オレが動けば奴も動く。

「オレ……なの…か?」

オレ……蕗乃尽。
4月11日生まれ。

年齢……年齢は…まだ11歳のはず…なんだけど……な。

はは……ははは……

そいつは……顔を歪めて笑った後…オレを見ていた……。

 

 

 

 

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