Night of beginning 16

 

 

マネージャーが俺に意気揚々と話しかけてきた。



「葉月!丁度良い所で会ったわ!彼を紹介するわね。彼は…」
「…知ってる。」
「え?」
「良いですよ、紹介なんて。オレも知ってますから…。」
「…そうなの?…あら?あなた……」

「ねぇ!アレって葉月珪じゃない!?」
「ホントだ!!」
「……なに、あのコ?葉月くんのなんなのよ!?」
「もしかして彼女!?」
「イヤー!うそーっ!?」


マネージャーが、兎羽子の顔を見て何かを言い掛けた時
近くで撮影を見ていた奴らが騒ぎ始めた。


「!あ…珪くん、わたし先に行ってるね!」

「え?あ!兎羽子!?」


兎羽子は桜並木に向かって駆け出して行った。


「……あの子…あ!確か、あの子アルカードの……」
「おい!」
「!」


マネージャーの言葉を遮って、尽が俺の腕を強く握った…!


「早く行けよ!…」
「!!……」


俺は尽の言葉に後を押され、走り出していた。



尽…

…おまえ……!



また俺の心を、不安が覆っていく…。



でも!…


今は兎羽子を探さないと……!



尽が掴んだ腕が…酷く痛んだ………。

 

 

 

 

「きゃーーーっ!!葉月くん、行っちゃった〜!!」
「ねっ!追いかけようよ!?」
「うん!!行ってみよう!!」



………いいかげんにしろよ!



「アレ?オレの撮影、見に来たんじゃないの?」

「あっ!」
「やだ!」


葉月を追いかけようとした連中が足を止めた。



「マネージャー!オレまだ撮りありましたよね?」
「!ええ!勿論よ!!まだまだ、これからよ!」



オレは側にいた女に笑いかけた。



「……だってさ。どうする?見てく?」
「あっ……!うん!見る!」
「そっ。じゃあ、ゆっくり見ていってよ。」


「わ、わたしも見る!」
「アタシも!!」



周りにいる女達も、すっかり足を止めたようだ。



「はい、はい!それなら、おとなしく見ていてちょうだい!」
「「「は〜いっ!!」」」


「彼は葉月に続く新人モデルなの。よろしくね?」
「きゃぁ〜〜〜!!!そうなんだ〜!」
「彼、カッコイイし!わたしファンに、なっちゃった!!」
「アタシも〜!!」



…………ハァ。


 

 

「上手くいったわね?侭くん。」
「え?」
「ファンが葉月を追いかけるの止めてくれて助かったわ。」
「!……」

「それに君もシッカリ!彼女達に売り込んだみたいだし。」
「オレは!……そんなつもりないよ。」
「そう?まぁいいわ。これから君は葉月以上に売れるわよ!ヤル気が全然違うもの。」
「……ヤル気……ね?」



……オレは葉月を守ったんじゃない。
オレが守りたかったのは、ねえちゃんだ……。

葉月のファンから……
この人から……

……守りたかっただけなんだ。




ねえちゃん……


葉月といて辛くないのか?

嫌な思い……してるんじゃないのか?

今みたいな事……いつもあるんじゃ……?

!!だったらオレ!
葉月に、ねえちゃんを任せられないよ!




オレは……


葉月に、ねえちゃんの携帯番号を渡した事を……

……酷く後悔していた……。

 

 

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