Night of beginning 26
アルカードから近い公園に来ると尽は黙り込んでしまった。
「……俺に話しがあったんじゃないのか?」
夢見が悪かったせいか俺は苛ついた口調で話し出していた。
兎羽子と一緒に居た事も……原因かもしれない。
「あのさ……。葉月は……ねえちゃんの事どう思ってるんだ?」
!!……ドキリと心臓が跳ねた。
尽の口から兎羽子の話は聞きたくなかった。
二人がアルカードに戻って来た残像が苛立ちを増していく。
「……なぜ、そんな事を聞く?」
俺の強い問い掛けにも怯む事無く尽は話し出した。
「知ってるか葉月?ねえちゃんって……結構、モテるんだぜ?」
眉間に皺が寄るのが分かる。
「何が言いたい?」
自分でも信じられないくらいの低い声が出た。
尽は深く息を吐き出した。
いつもの俺じゃないのに気が付いているんだろう。
それでも意を決したように尽は話し続ける。
「葉月はイイ男だと思う。人気モデルとかじゃなくてもさ。普通にしてても十分イイ男なんだよ。」
「……?」
「でも!……ねえちゃんもイイ女なんだよ。はば学に入ってからは前以上にキレイになったしな。」
「……」
「……他の男が手を出さないワケ無いだろ?」
「!!」
ドンッ!!
気付いた時にはもう尽の胸倉を掴み木に叩きつけていた。
「!!…痛ぅ……」
「……どういう意味だ?」
頭を抑えながら尽が俺を睨んだ。
「葉月がハッキリしないと、ねえちゃんが他の男に取られるって事さ!」
「おまえに何が分かる!?」
力の加減が出来そうも無くなっていた。
苦しそうに、それでも尽は俺に言葉を投げつけた。
「葉月だって分かってるんだろ!?オレが知っているだけでも結構な男の数だぜ!おまえの知り合いだっている!
このまま、ねえちゃんを指を銜えて見てるだけでいいのかよ!?」
「黙れ!」
「オレは嫌だ!ねえちゃんは誰にも渡さない!!」
「!!」
俺の腕を振り払い尽は俺を睨みつけ言い切った。
「オレは……ねえちゃんが好きなんだ!」
「尽……おまえ……」
俺が見た夢は……
正夢だったのかもしれない……。